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「毎朝の恐怖で食事が喉を通らない」 60代死刑囚、10年以上の執行待機期間の心境

 



今年に入り、京都アニメーション放火殺人事件や、犯行当時19歳の少年が起こした甲府市の放火殺人事件の公判で、次々と死刑判決が下された。命を奪う「究極の刑罰」であるが、国は死刑に関する情報公開に消極的な姿勢を見せている。外部との交流が厳しく制限された確定死刑囚への書面取材を通じて、この極刑の裏側を探った。

■死刑囚から届いた手紙は、丁寧な筆跡でつづられていた

 〈毎日、自分が執行されるのではないかと恐れている。夜明けごとに脂汗をかき、わずかな音にも敏感になり、職員の行動に神経を研ぎ澄ますため、朝食の味が分からないほど緊張している。朝が怖く、憎くさえ感じる〉

 この手紙は、西日本の拘置所に10年以上収監されている60代の死刑囚からのもので、10枚の便箋に丁寧な手書きの文字が並んでいた。記者は獄中生活の実態や心情を知るため、支援者を通じて書面取材を申し込み、回答を得た。

 文面には日々の恐怖が強調されていた。死刑執行が告知されるのは当日で、通常は朝に行われる。刑事収容施設法で執行がないと定められた土日祝や年末年始を除けば、安堵できる日はなく、精神的に疲弊する様子が伝わってきた。

 〈精神を蝕む人も少なくない。精神的な拷問に耐え忍んだ結果、死だけが救いに見える。明日は我が身という危機感で、平常心を保つことはできない〉

■労役はないが、行動は制限。牧師との面会が月に1度の「おしゃべり」

 懲役囚とは異なり、死刑囚には労役が課されない。情報公開請求で法務省から入手した「死刑確定者生活の心得」によると、大阪拘置所の場合、起床は午前7時半、就寝は午後9時。入浴(夏以外は週2回)や屋外運動(1日30分)がある一方で、「勝手に横たわらない」「むやみに立ち歩かない」といった行動制限がある。

 死刑囚は回答の中で、読書や室内体操、週に2回のDVD視聴など、独房での生活を明かした。面会や文通ができる相手は厳しく制限され、キリスト教の洗礼を受けた彼にとって、教誨師である牧師との月に一度の面会が「唯一のおしゃべりの機会」であるという。〈社会から隔絶され、完全に孤立している。外部との交流を切望している〉

■遺族への謝罪文は受け取りを拒まれた。般若心経で被害者を思う日々

 この死刑囚は1990年代に2人を殺害し、現金を奪った事件を起こした。逮捕後に遺族に送った謝罪文は受け取りを拒まれ、自身の心情を伝えることができなかった。彼は一日の始まりと終わりに般若心経を唱え、被害者のことを思っているという。

 事件前には感じなかった日常のありがたみや、他人の痛みや苦しみを知る心が芽生え、「違う景色が見える」と述べた彼は、現在の心情をこう記している。

 〈事件と自分自身に向き合い、身勝手な冷酷さを責め続けている。少しでも全うな人間になりたい。決してくさらず、最期の日までを生き抜きたい〉

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