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出産費用の上昇要因とは?透明化と保険適用の導入を検討

 




出産費用の負担についての議論が本格化しています。現在、出産は健康保険の適用外で「出産育児一時金」が給付されていますが、医療機関や地域によって出産費用に差があり、一時金では足りない場合があります。政府は少子化対策として「自己負担のない出産」を目指し、出産費用を保険適用とすることを検討し始めました。実現すれば、全国一律料金となりますが、経営難を理由に分娩から撤退する医療機関が出ることも懸念され、慎重な議論が必要です。

東京と熊本で出産費用に1.7倍近くの差

帝王切開などは「異常分娩」として健康保険が適用されますが、正常分娩は「病気ではない」とされ保険適用外の自由診療となり、費用は全額自己負担です。経済的負担を軽減するため、健康保険が出産育児一時金を給付し、妊娠4か月以上の人に50万円を支給しています。

給付額は出産費用に応じて見直されており、2023年4月に8万円引き上げられました。しかし、自由診療であるため医療機関は自由に料金を設定できます。政府が一時金を引き上げると、医療機関が料金を値上げする「いたちごっこ」が続いています。

厚生労働省の調査によると、2022年4月から2023年4月にかけて医療機関の45%が値上げし、そのうちの60%は一時金増額決定後に値上げを決めていました。出産費用は地域による差も大きく、2022年度の全国平均は48.2万円ですが、都道府県別では東京が60.5万円、熊本が36.1万円と大きな差があります。

保険適用になるとどう変わるか

政府は出産費用の見える化と保険適用の検討に取り組んでいます。厚労省は分娩施設の情報提供サイト「出産なび」を開設し、施設ごとの情報を提供しています。保険適用が実現すれば、出産に関する医療サービスの報酬が決まり、原則として全国一律の料金となります。また、出産育児一時金は廃止される見通しで、自己負担なしが前提となります。

しかし、保険適用によって料金が下がると収入が減り、経営悪化を理由に分娩から撤退する医療機関が出る懸念もあります。日本医師会の副会長は「地域医療にどんな影響があるのか、慎重な検討が必要」と述べています。

出産は病気ではないから保険適用外という見解の是非

出産の保険適用に関しては、「健康保険は病気やけがが対象であるため、出産は対象外」との批判があります。しかし、ドイツ、フランス、韓国などの多くの国では、出産は公的医療保険で対応しています。国際労働機関(ILO)の社会保障の最低基準に関する条約でも、出産は現物給付とされています。

日本の健康保険法施行以来、出産費用への給付は続いていますが、戦時中や戦後の事情から現金給付が原則となり、「病気ではないから保険適用外」という解釈が後付けされました。

最近では、政府も「病気かどうか」という原則論よりも、「地域や医療機関による費用差が大きく、出産する人のニーズが多様で標準化が難しい」という実態論に基づいて説明しています。保険適用の検討にあたっては、実態に即した最善の道を模索する必要があります。




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